曲がりシッポの別館

冴えないおやじのだらだらブログ

ミラー衛星衝突(L・M・ビジョルド著)を読んで

 ヴォルコシガン・サーガの新作「ミラー衛星衝突(原題:KOMARR)」をようやく読みました。
前作「メモリー」の後書きで既に翻訳済みとでていたのに、6年待たされましたが、正直がっかり・・・

(以下若干のネタばれがあります。後、気に入った方には不快な感想ですので読まないほうが良いですよ。)

 今作は、主人公マイルズの新しい恋人となるであろうエカテリンとの馴れ初めを描いているという事前情報はつかんでいましたが、子持ちの人妻(しかも専業主婦)として登場するとは。
ここから、いかにマイルズにふさわしい女性かと持ち上げ、二人の恋路を整える為のストーリーが展開されていくわけですが、その為にマイルズと機密保安庁は阿呆になっています。
その上、マイルズは盛りのついた犬よろしくエカテリンの尻をひたすら追いかけまわします。
作中の視点もエカテリンからのものが大半で、五神教シリーズの恋愛描写(ハーレクインとか揶揄されていますね)が受け付けない人には本当にキツイと思います。
ハーレクイン・シリーズなんて読んだことが無いので知りませんが、冷え切った夫婦仲の夫との性交渉に耐えている心理描写なんて醜悪なポルノでしたよ・・・
 元々、ビジョルド女史の恋愛心理描写は、私にはマニアックで異常に感じられるのですが、今回は度が越したかと。しかも長いし。

 同僚の聴聞卿の姪であるエカテリンの家で夕食を食べ一晩泊まった後は、彼女の家に留まらず、物語の最後までエカテリンが本筋に絡まなければ何時ものマイルズのお話でそこそこ面白かったと思います。
しかも、1冊で済むでしょうし。
逆に、二人のロマンスが深く書かれていると好意的に捉えられた方には良い作品なのでしょう。

 いままで、マイルズは体のハンデキャップを見返すため、又、偉大な父の期待に応えよう(勝手な脅迫観念ですが)とルールを破ったり、無謀な行動をして結果痛い目にあったりしますが、今回は本当にご都合主義が横行。エカテリンを主役に見せるために、他人を巻き込んだ致命的な失敗をします。
その上、事件解決そっちのけで、カウチに座って妄想したり、エカテリンの家庭の問題解決に奔走しています。
以前なら「くそう、ここにいるのは国主閣下の口添えで聴聞卿に任命されたミューティじゃなくて、機密作戦でバラヤーに多くの勝利をもたらせた有能な青年だってことを話せたら・・・」なんて感じで歯軋りするであろうに、ペラペラ極秘作戦での活躍をエカテリンに話して自己アピールに尽くしますし。
問題が自己の専門外であっても、現場をかき回してでも本質に近づき解決への糸口を掴むのがマイルズでしょうに。
しかも、あのコマールで機密保安庁の監視がザルだったり、ガレーニが出てこないってのもね。
ガレーニが出てくれば、何をしでかすか分らないマイルズとその火種になりかねない関係者の監視を怠るなんて事はありませんから、エカテリンは活躍できませんからねw
あと、イワンやグレゴールの事も書いて欲しかった。てか、通信でもいいからイワンは出せ!
 そんなこんなで、エカテリンに八つ当たりで大嫌いなキャラに(おひ。
次回作は、エカテリンとの関係が深まる話との事で、ハーレクイン節が炸裂するでしょうから、きっと買わずに図書館で借りる程度だろうな・・・
今まで、全巻買ってきたんですけどね。